引き続きウレシノのターン。
二学期から学校に行くって言って、確かに来なくなって、九月の中旬。
ウレシノは傷だらけで城に来た。
クラスの人にされたけど、いじめ、とは、ウレシノは思っていない。
でも、ママから見ればそれはいじめで。
何となく、心当たりがある。
小5の時だったかな。筆箱に何かよく分からない、でもとりあえず素手では触りたくは無いようなモノが入ってたことがあった。
最初何か分からなくて、先生にこれ何だと思いますかって聞いたんだよ。
「カタツムリ、潰れてるけどまだ生きてる」って。
カタツムリが可哀想としか私は思わなかった。けどさ、先生は続けてこう言ったんだよ。
「筆箱貸して。これは立派ないじめだから、説教と注意喚起する」
有無を言わせぬ口調だったからさ、渋々貸した。
でもその筆箱がさ、ランドセルについてた赤いシンプル…つまり地味なやつで、だからフタにも横にも裏にも絵が上手い友達と落書きしてて。
特に誰にも見られないからって裏にはびっしり落書きしてたんだよ。気に入ってはいたんだけど、それせもその時から、あんまり見せたいものではなかった。
授業前に先生がさ、ドンって筆箱を教卓に打ち付けた。
よりによって、ちょうど裏面がこっちに見える方向で。
それでさ、怒鳴る、とはまた違うんだけど、不機嫌なのが分かる声で、ずっと、これはいじめだ、絶対にダメなことだ、やった人は後で先生に言いにきなさいって言って、最後にどうこの件についてどう思ったか書けって。
筆箱の裏面がクラスに晒されたことが何より嫌だったけど、『カタツムリがかわいそうだと思った』って書いたよ。
で、数日後。
容疑者による謝罪面談が行われた。読書のための昼休みを潰して。
その容疑者ってのが5人くらいいて、あくまで容疑者で、しかも皆潰れてないカタツムリすら触れるかちょっと疑問な人達で。そもそも梅雨だったから勝手にカタツムリが入って勝手に潰れた可能性もあるのに。
しかも昼休みの時間は結局オーバーして、5時間目に入りづらいからって教室の前で一緒に入ってくれって待ってた。犯人だったとしても反省してなかった。
更に親にもこの事の顛末は当たり前だけど伝えられて、親もいじめだと判断した。
その、私の中での笑い話を、先生も親もいじめだと判断したのが1番辛かった。
当事者は、いじめだと思っていないのだ。どっちも。
で、更にウレシノに関する新情報。
名前は、ハルカ。ハルカ君。
知ってる人に4人いる。同じ学年に3人。漢字は分かるけど、ここまで出すとなんか特定されそうだからやめる。で、幼稚園の頃に、漢字は知らないけど、はるかくんっていた。
どうやらその女の子っぽい可愛い名前が嫌らしくて、自己紹介の時に1人だけ名字を名乗った、らしい。
で、こころの方にも進捗が1つ。
スクールっていう、不登校の子のための居場所の先生が、会いにきた。
「今も、闘っているから」
こころは悪くないっていう、根拠だった。